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5/7午前練

久しぶりの名古屋。
小道具を用いた稽古を行わせていただきました。

まずは準備体操として、
直立した状態でグーをつくり腕の上げ下げ。
お尻に触れる場所でグーをつくり腕の 上げ下げ。
体の前に腕を上げた状態からグーをつくり腕の上げ下げを行いました。
同じグーをつくるにしても、つくる場所で使われる筋肉が違うことを、そして違う筋肉が使われている状態では単なる上げ下げにも違いが生まれることを感じていただきました。
次に、E師範練でたまに行われること、仕手の片手を受けに両手で持ち上げてもらい、それを降ろすというのを行いました。
普段と違うのは、ここで仕手の手の内に0.5kgの砂袋。これを体側後方に持った状態で、行っていただきました。
何も無い時より、置くという意識並びに手の内へ集中が出来ていれば幸いです。

次に、仕手が持たせる手に砂袋を握った状態で、片手持ち呼吸投げをしました。
手を上げすぎない・投げる時に手先の重さを意識できる・最期に足腰がついていくことを期待して行いました。
三つ目は、仕手が受ける手に砂袋を握った状態で正面打ち一教。これも手を上げすぎない・切り落とす時に足腰がついていく・そして切り落としを砂袋の重さで自然落下でしていただけることを期待して行いました。
その後低い姿勢並びに膝行での体転換。最期に小手先の技術として片手持ちからの三教の崩しの部分のみ実施。体転換では足から動くのでは無く体軸をまず回転させることを意識していただく為に、足腰を動かさず正しい姿勢で首のみを動かして後ろを見ていただき、首の筋肉につられる感じで胴体並びに足腰を動かしていただきました。慣れてきたら上半身を捻らず後ろを見る感じで体転換を行っていただければと思います。また三教の初めの崩しでは、腕を動かさず、受けに掴まれた手で鉄砲の形を作っていただき、もう片方の手で人差し指を自分の方に少しそらさせながら円を描いていただくように動かしていただきました。これは掴まれた腕の表面を固定し、中だけを柔らかく操れるようになることを期待して行いました。慣れてきたら、掴まれた腕のみで行ってください。
砂袋はいくつか置いてきましたので有効活用してください。大人であれば両手に一つずつ持って、「頭上で軽く腕を振り、その後脱力して腕を落とす」脱力法の補助にも使えるかも。ただ、いきなり勢いよく行うと筋肉を痛めるのでご注意ください。

E師範講習会 in 滋賀

心揺れましたがBBQをあきらめてE師範の講習会 in 滋賀に初参加してきました。

予習のつもりでユーツベで動画をいくつも見てたんですがその際に思っていたからだのサイズと実際のサイズがぜんぜん違うことにまずおどろきました。
動き・技・姿勢・オーラが錯覚させるのかどうかしりませんが動画からは175~180ぐらいの方を想像していたのですが実際は150台ぐらい。しかし講習会が始まると自分よりも大きく見えることに対してさらに驚きを覚えました。講習会後他の初参加の方も同様の感想を抱いていたようだったので、誰にでもそのように見えるということは「高みに達せば身長差を嘆く必要が少なくなるんだろうなぁ」ということに関して身長の低い自分も希望を覚えました。

さて講習会の内容はというと

初日は主に後ろ持ち、少し片手両手取りという内容でした。
技におけるからだの使い方に関して、相手をどうこうしてやろうというよりも自分が如何に自然に楽に動けるかということを主として述べられているように感じました。

技がすばらしいのは勿論のこと、技を伝えるという目的だけでなく正しい練習方法を如何に伝えるかということを前面に推しだされていることにもすばらしさを感じました。

下記におっしゃった内容をざっと記載しますと

・実戦における合気道は、相手が決まった攻撃・決まった反応をするわけではないので千変万化するものである。なので型稽古の型は実戦に即しているわけではない。
・何故型稽古をするかというと色々なシチュエーションで動ける体をつくることが目的であり、色んな型において相手を投げることに固執することは意味が無い。
・型稽古では仕手が何をしてくるか分かっているのだから受けが下手な受け(仕手が腕を振りかぶる動作をするだろう際にそれを邪魔する力)をすると型稽古の意味が無くなる。もしそんな受けがいるならすぐに他の型に切り替えてしまうなり当身を入れてしまうなりすれば良い。なので型稽古の際、受けは初めにつかんだ状態から自分の状態を変えてはいけない。投げる・投げられるではなく仕手がいつでも正しい体の使い方を出来るかのチェックのようなものだから。でも下手な受けが主流となっているため、合気道を長年続けている人には硬い人が多い。いつからでも遅くないから無駄の無い楽な動き楽な動きを突き詰めていくべきだ。他の人がやっているからといって疑わずに真似をするだけだとそういった悪い深みにはまる可能性があるから気をつけたほうが良い。
・見の眼よりも観の眼を磨くこと
・手は脱力し、指先は地面の下まで伸びているような意識を持つ。
・意識的な技の練習も大事だが、たまには無意識のうちに技が出るような追い込まれた練習も必要だ。
・相手がどうとかではなく、自分がどう動けるかが大事。
・後ろ持ちでもたれた際に手首に力を入れない。
・後ろ持ちでもたれた際、腕をどうこうしてやるわけではなく腕は指の先が地面の下まで伸びているかのような意識を持って脱力しておき、体のほうだけ動かして腕を自分にとって都合の良い場所にくるようにしてやればよい。
・後ろ持ちの手をくぐった後、一教を行う際にひじをつかむのは良くない。掴むと腕の稼動範囲が減るから手の平・手刀部などで触れてやるように押さえるのが良い。私は基本的にあまり掴まない。
・受けは力をいれて持ちすぎると自分の稼動範囲を著しく小さくしてしまう。そんな持ち方ではなんの応用も利かないし先も無い。力をいれた後もしっかり稼動するようにもてるような持ち方を考えて持つべきだ。相手を操りたいならぐっと掴むよりは掌に挟むぐらいが良い。
・片手両手持ちで相手を投げようとするのではない。もたれた腕を脱力しておき、体の移動により腕を体の中心に持ってきつつただ腕を上げるだけである。腕を上げた後投げよう投げようと意識するのでは無く、上げた手を自分に収める気持ちで行う。

二日目は片手持ち、正面打ちという内容でした。

初日と同様に受けに関しても考察を深めるべきだという内容もお話になられ、相手を掴むという単純なことが如何に難しいことか、そしてただ相手の正面を打つということが如何に難しいかを非常に考えさせられるました。初日もそうでしたが二日目は仕手よりも受けに関してのご説明のほうが長かったぐらい、受けの大切さを強調されていたように感じます。

・仕手の際に手首、掌を固めない。固定観念に縛られない。
・手、腕は脱力しておき体が大事な位置に移動するだけ。
・受けは腕や肩を固めず、仕手の崩しをひざで感じ取れるに行いやわらかくやわらかく受けることで技の流れを出来る限り長く感じ取れると良い。固めているとすぐに終わってしまう。
・正面打ちの受けは手首や肘・肩を固めず、はじめは正確に打つことのみを考えたほうが良い。強くうってやろうとか早くうってやろうとかを早くから考えると、正確性が無い上に崩れすぎた受けになってしまうだろう。そんな受けには何の意味も無い。
・正面打ちの仕手は受け止めるのではなく迎えにいってやる気持ち。ただし相手が打ってくるのだからむやみやたらに前に出るのではなく最低限出るようにする。

他にもたくさん教わりましたが今思い出せるのはここまでです。
技術は勿論のこと、心構えや体作りなど様々なことに関して多くを学ばせていただいた非常に有意義な二日間でした。

二日目は遠路はるばるEさんもいらしていて三元の技を体験させていただきました。E師範の技でもEさんの技でも如何に肩甲骨の柔軟性・稼動域の広さが大事かを改めて感じさせていただきました。どうもありがとうございました。

手の内について

合気道の練習において相手を掴むというのは主に受けの時、そして固め技のときだと思います。この掴むという行為を指に力を入れて行うと、指の力を強くすればするほど手首は動かなくなると思います。つまり指で掴んでしまうとその掴んだものを次に操る部位はいきなり肘になってしまうということです。 それに対して掌で掴んだ場合は、掌への依存が強くなればなるほどそして指の力が抜けるほど手首の自由度は増します。一つの関節が自由に使えるのと使えないのでは大きな違いがあるということはこちらの道場の方々なら既に経験済みですよね。(指を持たせての体術などで)

この手の内を意識するかしないかということは剣術でも顕著な差を生み出します。というのも一つ考えていただきたいのは、例えば自分が手刀で正面内をする場合に指を力ませるのと脱力させるのとではどちらのほうが威力が出るでしょうか?もちろん当てる瞬間は力を入れるとしても後者のほうが威力が出るものだと思います。

ゆえに剣を持つ際も指の力はなるべく使わず手の内にて剣を包み込むように持つほうが良いという理につながります。もちろん手の内ははじめは硬いのでうまく持てないでしょう。これは体術においても二教や三教等で同じことが言えます。

この手の内の柔らかさはもちろん意識しなくても技の研鑽を積み重ねることで、手の内の重要性に気づけば自然に磨かれるとは思いますが、柔軟のようなものですから意識して早めに取り組むと吉と思います。

 

剣術についてその2

体術においても同じことですが、剣術でも一つの技を行おうとする時に身体に求められる要素は多岐に渡ります。
体術の方が少しばかりイメージしやすいと思うので例えばメジャーどころである片手持ちの側面入り身について記しますと

1,掴まれた腕を必要以上に力ませない
2,掴まれた腕を動かす際には掴まれた場所から出来る限り遠くの筋肉を使う
3,相手の体側に入り身する際に足で地面を蹴らない
4,3の際に体幹部以外の筋肉を固めない。
5,呼吸の流れを止めない。
6,自分の力の流れに方向付けをする。

個々人によって異なることですが私の中では上述の様に考え、自分に足りない要素を練磨するよう心がけています。

同様に、剣術においては例えば袈裟斬りについて要素を分解すると

1,剣を手の内で持ち続けられているか
2,手首、肘、肩に力みが無いか
3,剣を運ぶ際になるべく手から遠くの筋肉を使っているか
4,呼吸を臍下丹田に収めることを意識しているか
5,足運びの際に地面を蹴らず、足を力ませず、バランスを崩さず動けているか
6,重心が上下動せずに動けているか
7,ものうちに力を出すことを意識しているか。途中で剣先が死なないか。

この様に様々な要素が一つの動きにおいて存在していますので、指導している際に聞かれることとして『この技において私とスキンさんと何が違うんですか?』という問いに対しては何もかもと答えるしか有りません。少し丁寧に書くと『何もかもがある程度は出来ているがあなたの求めているイメージ通りの動きをするには何もかも足りていない』となります。そして特に足りていないものをその時々指摘するようにしています。しかし特に足りていない部分を伸ばさなければいけないのは勿論ですが、最終的には全要素を均一に伸ばさなければならないと思います。

ただし、ここで勘違いを防ぐために申し上げたいのは、あくまでご自身の身体作りに関しては足りない点をどんどん補うべきですが技に関してはそうとは思っていないという点です。

全ての技を、誰にでも上手くかけられるのは理想ですがそんな理想は師範と呼ばれる方々でも難しいと思います。またそういう方は臨機応変に、相手と状況に応じた技を用いられます。

ですがどうしても練習だと、技と相手を固定して行いますので相手の体格との相関において不適切な技を練習せざる負えない場合も多々あります。不適切というと語弊があるかもしれないので言い換えると、その人の現在の力量や体格において技の行いやすさに大きな難易度の違いが存在します。この前提を無視して技をかけることに固執すると、いきなり身体が出来上がるわけも無いので無理な力の使い方やその場のその人にしかかからない技を追い求めるという結果につながります。ですのでかからないならかからないで、技をきれいにかけることに囚われず現在の自分の未熟な点を見つめつつその技の動きから鍛えられるべき部位をコツコツ鍛えることが良いと思っています。

上述からは体術をイメージされるかと思いますが剣術も同様です。全ての技をある程度しっくりいくようにこなすには身体作りが不可欠です。身体が出来上がるのを待っていると生涯かけても合戦にいけるかわからないので、ある程度形を覚えたら先へ進み、合戦までいって袈裟斬り・正眼の構え・無構えに戻るというのでいいんじゃないかと思います。

護身術という意味においても、いろんな技が使えることよりも適宜身体が反応してスムーズに動けることが大事だと思います。こういう面から考えても、一つ一つの技に固執する癖はつけない方がいいのではないかと。

身体と技、どちらかだけが先に完成するということは決してありません。一つの事に集中することは良いことではありますが、固執して視野を狭めることはせず、視野を常に広く持って稽古を続けたいと思っています。(難しいですが)

剣術に関して その1

体術に関しても同じですが、私は剣術が使えるようになる為には大きく分けて二つの柱を育てることが大事だと思っています。

一つは剣術の術理を覚えること。一つ一つの型はどのような理合で成り立っているのかを理解し、その理合をつきつめることが大事です。例えば裏太刀一本目なら、仕手の形、仕手のタイミング、剣の物打ちでの捉え所、捉えた後の攻め所などを押さえるのが基本でしょう。

また二つ目は剣を自在に操れること。剣をあるべき場所にあるべきタイミングで運べること、物打ちに力を集中させること、物打ちに集中したままで自由にあやつることなどが基本でしょう。言葉で書くと簡単に見えますが、体術で考えると非常に難しいことが想像していただけるかと。(体術の際、自分の腕・体を思い通りの位置に動かし思い通りの力を出すことと同じですから。)

これら二つは片方だけできていても弱く、双方をともに鍛える必要があります。正しい型稽古(基本太刀、裏太刀など)を、厳密に行えれば理屈上は術理だけで無く正しい剣の操作法も身につく筈ですが非常に厳しい道のりです。

というのも、正しい型通りに剣を動かすには動かせなければならない筋肉が多々あるのですが、初心者の方はそのほとんどの筋肉が日常では使わない筋肉であるため凝り固まっているため動かないからです(私も未だ動かないですが)。私のイメージできている限りでは肩甲骨周り、脊髄周り、腎臓の辺りなどがありますが他にもまだまだあると思います。なのではじめから厳密に行おうすると、ほとんど剣を振れません。

では剣を振れる身体を作るにはどのようなことをすべきかと考えたとき、まず通常の柔軟体操をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。通常の柔軟は呼吸に合わせて非常にゆっくり行うものと全体で練習前に行う体操の様にリズミカルに行うもの両者を実施することで柔らかい動きができる身体になると思います。前者だけだと稼働域は広いが動き出すとぎこちないし、後者だけだと稼働域が中々伸びないというふうに両者共に大事です。

剣術でも同様で、剣術に適した身体へ変化させるためには両者を必要とします。そして仕手受けが存在する剣術の型において後者は伸ばしやすいですが、前者(稼働域を広げる動き)を育てるには仕手受け両者に前者を育てることに対する高い意識が求められます。というのも、呼吸に合わせて行う柔軟がそうであるように、自分の剣術を行うために必要な様々な筋肉の稼動域を広げるには自分の呼吸に合わせてじっくり行う必要があります。そういう状態へ仕手を導いてやらないといけないことを考えると仕手以上に受け手に非常に高度なレベルが求められると思います。

そして私自身が受けをする場合は、そこまで高いレベルの受けはできるとは思わないので型稽古の中でその稽古を実施するよりも一人で素振りを行うことによって実施するほうが現実的ではないかと思います。ただしそういった受けが出来ないなりに、もし自身が受けの際に仕手のそういった能力(剣を自在に操れる能力)を伸ばすために気をつけることがあるとすると

1、しっかりと型稽古において、型だけでなく呼吸を見せてあげる。
2、自分が力(腕力に頼らない)の出し方に細心の注意を払う。

などがあげられ、これらを受けが注意することにより仕手をいい方向へ導くことが出来るのではないかと考えています。ただし人間一回の稽古で吸収できるものの数は限られているので、私が受けを行う場合、初めは型を覚えていただくことに専念するでしょう。

剣術について その0

ここでは3/22の午後に初心者向け剣術練習にて実施したことの意味合いについて記載しようと思います。
とその前に、三つのことを考えてみてください。

一つ目。強い剣とはどのような剣でしょうか?力強さも勿論ほしいところではありますが、やはり速いことではないかと思います。そして単純な剣速が早いことも大事ですが、目標地点に最速で到達できること即ち最短距離を剣が移動することも大事だと思います。その他に起こりを見せないことなどもありますが今回はこれは置いておきます。

二つ目。裸拳を頭上に掲げた状態からもっとも早く振り下ろすにはどのような筋力が必要でしょうか?振り下ろすという動作が難しければ腕をブランブランと振り子のように前後に動かしてみるのでもかまいません。これらの動作を行う際に拳を強く握りこんだり、上腕に力を入れたり肩に力をいれるとどうなるでしょうか?きっと動きは遅くなると思います。剣をもって同じ動作をしても使う筋肉はほとんど変わりませんので前述のような腕力は剣に負の影響を及ぼす恐れがあるということがお分かりいただけると思います。

三つ目。例えば剣を上段に構えた状態から最速で振り下ろすにはどのように振り下ろすのが一番早いか?人によって異なると思いますが現時点で私が最も早く剣を振り下ろすには、左手で剣の柄を握り右手は剣を前方下方方向に向けてポンっと押すという動作になります。もっと早い振り下ろし方があったら教えてください。ここで私が言いたいのは両手で正しく剣を持って振り下ろしの動作を行った場合に、自分の最速よりも遅い振りになるとしたらその遅くなる原因を一つ一つ取り除いたほうが良いということであり、取り除けるだろうということです。簡単にいうと、剣を振る際に肩・肘・胸など色んな場所が邪魔するよね~ってなことです。

他にもこういったことは考え出したらきりが無いくらいあります。これらの前置きで伝えたかったのは、新しい動き未知の動きを練習する前に少し身近な動きで新しい動きに対して考えてみると何が良くて何が悪いかの判断指標が自分の中にも出来る筈ということでした。前置きはこれぐらいにして本題に入ります。今回の練習で初心者の皆さんにお伝えしたかったことは主に2点

①剣の動きを邪魔しない。
②左手が中心から外れない。

があります。この二点を強く認識していただくような練習を心がけました。①はその言葉通り、剣は初速を与えてやれば剣の重みだけで後はある程度動きます。この剣の重みによる動きを邪魔しないということです。そして②は前述しました剣を最短距離で動かすことのほか今後に役立つ様々な要素を含んでいます。これらを身に着けていただくメニューを組みました。

まずは剣の持ち方。初めての方だけで無く、剣を握り始めてから数年という方でも案外できていません。できていない方は基本的に手の絞り込みが甘いためこの状態で剣を降ると、剣を止める度に手首が固まる為、剣から柔らかさも強さも失われます。勿論、私が教えた持ち方を初心者の方が実施すると強制的に脇まで締める状態になる為剣の振り上げふりさげすらままならないと思います。しかし剣の動きを邪魔するような腕力を使わずに剣を行うには必須ですので気をつけてください。
次に剣の重さを実感する稽古を実施。まずは剣を正中線上かつ頭上に構えた状態から左手だけで維持し、右手でぽんっと押して落とすという作業。そして落とした剣は受けに臍の位置で構えてもらった剣で受けます。次に同じことを普通に剣を掴んだ状態で実施していただきました。ここで体感していただきたかったのは、力を使わなくても剣の威力は出せるということと、下手な力は剣の動きを邪魔するということでした。
引き続いて、剣を操る際の手のうちの締め方について説明しました。これについて記載する前に少し剣に関しての大原則について記します。剣の威力は、剣の速度と切る対象物に当たっている際の手の内・脇・身体の締めに依ると思います。そして締め方を基本から学んでない方の多くに見られるのは締めると同時に剣の速度を減速させてしまうため剣の威力が格段に落ちるということです。こういった剣を殺す締めにならない為の締め方、手首の力は使わず掌や手の内だけを締める方法を練習しました。そしてその後、剣の重さを実感する方法に手の内だけを締める方法を組み合わせた練習を実施。この練習の際に注意して欲しかったのは、剣が受けの剣に当たる前に手の内を絞るのでは無く受けの剣に少し重みがのった瞬間に絞らなければならないということでした。このタイミングを誤ると剣の重さをいかした切りが出来ないので非常に重要です。
次に切り割の指導にうつりました。他の動作でも同様ですが、初心者は軽いはずの剣の重さや右手の動きに引きずられて左手が中心線上から外れることが多々あります。そして左手が中心線上から外れると剣は最短距離ではない余分な軌道を動く為、相手に届くまでの時間が余分にかかることは勿論ですがさらに悪いことは軌道に一貫性が無い為、剣尖の力が弱まります。
というわけで左手を中心線上からずらさないことを強く意識していただく為にまずは両手共に剣の柄を掴んだ状態で剣をふっていただきました。
無構の状態から両手は中心線上を上下するのみ。両手を上げた後、剣尖が中心線上にくるタイミングで両手を降ろす。たったこれだけの動作でも、予想通りというか中心線上から手が外れる方が多数ありました。手がある程度外れなくなったのを確認し、今度は剣を普通に掴んだ状態から切り割を。右手が中心線上から外れている分、右手の悪影響をもろに受けている方が多数。
最終的には剣の動きに、自分の筋力などをプラスしてより速く強く動かせることを目指していただけば結構ですが、初めはとにかく剣が自由に動くのを邪魔しないように身体の節々を動かせるようになることを目指してください。
切り割で意識してもらったことを袈裟切りでも意識していただき以上で剣の練習は終了となりました。

道具の効能1

道具といってしまうとまじめな方の怒りを買うかもしれませんがあえて。

合気道では杖や剣を練習の一環として用いている流派が多いように思います。これらの道具を用いることによる効能は何かを考えたときその中に以下のようなものがあると考えています。

それは自分の手元よりも遠くに力を意識すること並びに中心からの力の出し方を意識することです。言葉にしてみると全然違うように見えますが、この二つは身体の使い方という面から見るとほとんど同じことだと思います。

前者に関して、剣先に重みを出す場合と持ち手に近い場所に重みを出す場合を考えてみます。手首や肘を起点とした場合は手に近い場所に、そして肩や背中・臍を起点とした場合は剣先側に重みが出やすくなります。これはどこに出せるから凄いというわけではなく、思ったところに出せるようになることが大事だと思います。

剣や杖だけで意識することが難しい場合はこれらよりも少し重いものや軽いものを振ったほうが意識しやすいかもしれません。重いものをもって自由に振ることはかなり難しいと思いますのである場所(例えば正眼辺り)で維持するだけでかまいません。維持する訓練を続けるだけで背中・臍・丹田を用いて持つことを意識しやすくなっていくと思います。下手に重いものを振る訓練を実施すると、肘から先や肩から先の腕に頼ってしまうため背中や臍の意識をすることが難しくなるかと思いますので無理しないほうが良いでしょう。また軽いもの(例えばお箸)はただ振るだけなら誰でも簡単にできます。しかし剣を振っているときのように全身で振ることは相当難しいと思います。ためしに手首、肘、肩の関節をできる限り固定してみて振るのもいいかも知れません。ある程度振ることができるようになったらお箸の先っぽに重みを出したり、手元近くに重みを出したりという風にこんなことでも身体操作の訓練につながります。

 少し話は変わりますが合気道の技を実施する場合に、いろんなポイントがありますがその一つに掴まれた部分・接触した部分から如何にして自分の意識をはずすかということが挙げられます。もすこしわかりやすく言うと掴まれた部分・接触した部分にとらわれると、その付近が緊張してしまうと同時にその付近を動作の起点としてしてしまう傾向が人間には見られるため、技の受け側に仕手側の動きがばれやすくなってしまうためです。またその際、受けを無視して仕手だけの動きに関して観察したとしても一人でシャドーで動いているときに比べて技云々以前の問題で不自然な動きをしている傾向がみうけられるでしょう。というわけで掴まれた部分・接触した部分から意識をはずすということは技を行う上で重要な項目の一つといえます。(無視するわけではないですが。)そして意識をはずすと同時に動きの起点が遠ければ遠いほど受け手には動きが伝わりにくいため道具を用いた練習により意識を遠くにおくことは非常に有用といえます。例えば30~40cmの棒を剣を持つような形で両手で掴んだ状態にて四方投げなどの片手持ちの技を行ってみるのもいいでしょう。勿論長ものをもってその先を意識して行えば行うほど技自体のとっかかりはやりやすくなるのですが、長いと途中から動きの邪魔になると思いましたので。

そしていままで記述してきた遠くへの意識とは別に自分の中心への意識も道具を用いたほうが良い場合があります。先ほどの30~40cmの棒を掴んだ状態にて片手持ちで、手が中心からずれることが修正されることはもちろん、両手持ちでも例えば天地投げの崩しはじめのある部分まで棒を介在させることで中心で動くこと・両手のバランスを保つことが大事かを感じていただけるのではないかと思います。そして中心への意識が深まれば深まるほど、身体の末端ではなく中心に近い部位からの力を自然に使えるようになります。

もちろん最終的には道具を介在させること無く、身一つで何でもできるようになりたいとは思いますがあくまでも最終的にの話なのでどんなときでも柔軟に道具をもちいる頭をもつほうが上達・護身への近道かなと私は思っています。

12/21午前

今更ですが先日の稽古に関して。

稽古内容について述べる前に、私の合気道に関する一つの考えを述べます。合気道の下手上手は技の動き云々ではなく身体がどれだけできているかだと考えています。この身体というのは筋肉量というよりはバランスの完成度であり、臍下丹田への集中度であります。バランスが完成されていればいるほど、臍下丹田への集中度が高ければ高いほど様々な動きをした際に余分な筋力は必要としなくなりますし、余分な筋力を必要としなければ各部位に生ずる力みというものも生じにくくなります。さらに様々な動きをする際の余計な力みがなくなれば動きによって生ずるエネルギーをより直接的に相手にも伝えれるようになります。以上のような理由から身体作りは合気道において非常に大事な要素だと思います。そしてそれぞれの技は勿論技としての効能もありますが身体作りのための様々な手段だとも思っています。しかしそれぞれの技を分解した場合に大体3項目以上の手段が含まれているため、身体作りにとって効率的ではあるのですが一つ一つを習得しにくいというデメリットも含まれています。

例えば四方投げについて見てみると、

・歩き方ができているか。

・腕の振り上げ、振り下ろしができているか。

・接触時に緊張しないか。

などざっと挙げただけでも3項目あり、これらがすべてある一定以上のレベルでできないと気持ちよい技はできないでしょう。かといって四方投げの技の中でそれぞれを分解して訓練することは難しい。というわけで12/21のような練習を行いました。

12/21の練習では既にNoriさんが投稿してくださったように

・片足の時もバランスを意識した四股。
・二人一組でおんぶして腰を落とした低い姿勢で畳の往復。
・三人一組で更に帯のあたりを押してもらって丹田に力をこめて同じことを片道

・早四股

・腰を切る練習。

などを行いましたがこれらはすべて正しく歩けるかに通じます。片足の時もバランスを意識した四股・早四股・腰を切る練習は一見違う練習に見えます。しかしそもそも歩く際にはバランスをもっともっと意識しなければなりませんし、無駄な力はできる限りぬけていなければなりません。そして皆さんには「片足のときもバランスを意識した四股」の時並みに高い意識をバランスに対して持った状態にて練習の時には歩いていただきたいと思います。そうすればただ歩いているだけに近い状態で「腰を切る練習」で行ったような動きができます。「腰を切る練習」は実は腰を切るではなく正しく歩けた場合の先に見えるものを実践していただいたに過ぎません。

 今回は歩くに特化しましたが、受身や腕の上げ下げ一つとっても高いレベルで行えるようになれば即技を行っているように見えるようになります。もちろん漫然と、練習前の準備運動のような気持ちで受身を取っていては決して高いレベルにはなりません。床を蹴らず・床に接する際にどれだけ接する部位への圧力を均等化するか・どれだけ身体を緊張させずに行うか・どれだけ筋力を使わずに身体の重みだけで行うか など実は受身一つとっても気にする項目は多種多様にわたります。色々な動きに対しても同様に一度考えてみることは決してマイナスにならないと思います。

P.S. ただし考えるのは練習前・技に入る前で、練習中・技の最中はあまり悶々しないでくださいね。

受けについて

先日指導時に受けについて説明することがあったので、一度書いてみようと思いました。

合気道の受けには様々な形があります。片手持ち、両手持ち、諸手持ち、交差持ち、正面打ち、横面打ち、上段突き、中段突きなど。これら一つ一つの動作に関しても巧拙があります。

例えば持ちに関して言えば、受けではなく仕手のつもりで片手や両手を取る場合、相手を持った瞬間(触れた瞬間というより掌握した瞬間でしょうか)に相手を崩すように身体を使わなければなりません。その為には仕手でもたせる際に注意していることを受けで持つ際にも注意する必要があります。(仕手の際に肘や肩に余計な力みがあるといわれている人は、受けの時も同様のことが言える場合が多いと思います。)

また打ちに関して言えば、例えば胸倉を掴んできた相手を手刀にて切り落とす動きの際に脇・肘を締めて肩から先の余計な力を抜くというような注意をしているとしたら、それは受けの際に正面打ちや横面打ちにおいて同じ注意ができるはずです。

仕手の際に漫然と仕手を行っていても成長しにくいのと同様に受けの際も漫然と行っていては成長しにくいものだと思います。

また以降は指導を行えるレベル(2級以上)に関してよく見られる傾向なので記載します。

上級者が全力で相手に打ち込んだり、全力で掴みにいくと低級者は型通りに技をかけることは基本的にはできないので練習にならなくなります。しかしだからといって例えば7割りぐらいの力しか出さないということを続けていると、そのうち出したくても7割の力しか出せなくなります。

私の場合を申しますと全力が出せる間合いや体を維持しつつ、片手持ちの場合なら相手を掌握する瞬間に相手の腰の力に合わせて手加減する・正面打ちの場合なら意識して起こりを見やすくするとか当たった瞬間に威力を調整するなどを行っています。また自分と比べて型通りに動けていない方に対しては少しでも正しい型どおりに動けるように手助けする方向性を示した受けをするよう心がけております。そのような方向性を受けを通じて全て伝えきれるのが最良だとは思うのですが足りない部分が生じるため口頭にて説明を補足することが多々あります。そしてがんさんなど一部の自分より格上の方や同等以上の相手に対しては当てるつもりで打ちにいく・崩すつもりで持ちにいくという練習をさせていただいています。(自分に気が入りきっておらず全力を出し切れていないことも多々ありますが。)

正面打ちの際に起こりを見易くすると書きましたように、攻撃というものは威力や重さと同じかそれ以上に如何に相手に気づかれずに実施するかということが大事ですので相手に反応されないように持ちにいく・相手に起こりをとらえられないように打ちにいくということを意識することが大事だと思います。そしてこれは意識して練習しない限りは身につかないのではないかとも思っています。

起こりを見にくくするということは仕手のときも大事なことであり、仕手のときも受けのときも注意点は似たようなものですのでこれまた仕手の際の上達につながります。

 このように受けは仕手と同じくらい大事だと私は考えています。

ちなみに初心者は技の流れがわかっていない場合が多いため、思い通りに技がかからないことがあるかと思います。しかしこういった場合にこそ自分の合気・呼吸の力が試される時だと思いますので白帯の子供相手こそ一番の練習相手と考え、丁寧な技を気をつけることで他武道経験者とも合気・呼吸を合わせることができるようになることにつながると思います。

12月14日稽古

既に多数の方のエントリーによりほとんどの情報が記載されてしまってからの、満を持しての投稿です。

練習、懇親会ともに非常に盛り上がりました。皆さんの体力の有り余り具合からみて次回4月は1時から3時半まで全体練、3時半から5時まで自由練にしようかなぁと考えています。(前の時間帯に他団体がいなければ12:40過ぎくらいからは平気で道場使用できそうですし。)覚悟しておいてください(笑)。

T大OBの方々は予想通り面倒見が良かったようで子供たちも喜んでくれて何よりでした。

今日既にHさんと副館補佐さんが実施されたような 歩く・脱力するに加えて腰を切る・崩すに特化したメニューを考案中です。土曜日はそこそこ期待してください。

 

12月14日に関しての連絡事項1

皆さん。当日はよろしくお願いします。

現在決まっている点についてupします。

開催日時:12月14日土曜日 午後2時~午後4時 (ただし道場は午後1時から午後4時半まで確保しております。私は1時からいますので余分に練習したい方は1時からがんばりましょう。)

場所:滋賀県立武道館2階 柔道場 (大津ICから車で10分ほど、電車の場合は膳所駅から徒歩10~15分)

懇親会 17時から膳所駅前の居酒屋にて考えています。

 

 

立つことについて

たらいの話にリピート要求があったとのことなので、確かこんなタイトルで書いたと思いますので再度upします。とはいっても前回のも今回のも思いつくままに書いているので内容は少し異なっているかもしれません。

日常における立つという動作はほとんど無意識に行っていると思います。しかし武道における立つという動作は非常に難しいものだと私は考えています。

どういった点が難しいかというとざっくり言えば全身に無駄な力みが無い状態を作ることと言えますし細かく言えば肩・腕・首・背中・腰・太もも・ふくらはぎ・足首などすべての箇所で最低限の筋力しか用いずに、立っている状態とできるように各部位の骨をあるべき位置に持っていくと言えます。

こんなことは人間誰でも無意識に行えているんじゃないかと思いたいところですが、少しばかりバランスが悪くても二本足で立っている人間は転びません。また人は常に目から入る情報によってバランスを微調整しているのでなかなか自分のバランスが悪いことには気づけません。

複雑な動きをした際や他の人と関わった際にようやく自分のバランスの悪さに気づくことができます。例えば体転換ですね。体転換をした際に自分のバランスの支点が一点に集中していればしているほどブレはなくなりますが、集中していなければブレが大きくなります。やじろべえの支点が強ければ強いほどやじろべえのバランスは強固なものになりますが支点以外の部分に邪魔なものがあればあるほどちょっとした動きでバランスは崩れるのと似たようなものです。

ではより良い立ち方をするにはどうしたら良いのかというところで先日のコメントにもありました水のなみなみ入ったタライを持つという話が出てきます。イメージができるならイメージでよいですし、できない場合は一度実際に行ってみるといいかも知れません。大人の男性なら10~15Lぐらいの水が入ったタライを鳩尾の高さぐらいに両手で抱える。その際に胸からタライは少し距離を置くこと・腕は伸ばしきらないこと・背筋はまっすぐであること に注意します。そしてタライを持った状態にて水をこぼさないように慎重に動いてみましょう。このような動作をすれば少なくとも下半身に関しては一歩理想に近づけるかと思います。

続けて、ここからさらに前進してみましょう。前進する際にどのように前進するのが一番水への影響を少なく動けるでしょうか?実際にいろいろ試してみて正解を見つけてみてください。

私は正しく立つということは非常に重要だと考えています。というのも例えば腰が固いとか右ひざが固いという状態を放置したままで練習を続けていると、確実に固い部分に過負荷がかかるため故障につながるからです。

柔術の鍛錬は人と向き合う鍛錬も大事ですが、自分の身体と向き合うという鍛錬の方がより大事だと思います。怪我をしない体をつくれるのは最終的には自分の意識の在り様のみなのでその点を常に念頭に置くのが良いと思っています。

 

四股と円かきについて

四股とはもちろんただの足腰の鍛錬法というものにとどまらないと思います。しかし、四股を単なる足腰の鍛錬法でないものに昇華する為には様々な注意事項があります。誤りもあるとは思いますが私が留意している点を述べますと

①上半身はできる限り脱力する。
②地面を足で踏む際になるべく膝・太もも・ふくらはぎ・足首などに力を入れないようにする。(膝を痛めることにつながります。)
③足を上げる際に膝が内向きにねじれこまないようにする。
④腰の筋肉が張らない様気をつける。(腰を痛めることにつながります。)
⑤一回一回腹式呼吸を実施することを気をつける。
⑥足の内側の付け根の筋肉を使うことを意識する。(足の外側、つまりは直立している際の前面の筋肉はなるべく使わない。)
⑦勢いでやらない。(ゆっくりやってもバランスが維持できるよう常に体のバランスを意識する。)

次に円かきについて述べます。円かきとは基本的には股関節の柔軟と背中の柔軟、そして臍下丹田への集中という三つのことを同時に実施しようとしている動作だと思います。ただしこの円かきは無理して行うと非常に膝を痛めやすいと思いますので各人無理ない程度に行うほうがよいかと思います。(大きく膝を痛めたことがある身として)
あくまでも四股の予備(足腰がつけば・臍下丹田への集中力が増せば・股関節が柔軟になれば円かき自体を実施しなくても円かきへの耐久性はまします。)ならびに四股によって身体作りが適正になされているかの確認みたいな形程度で用いられるほうが安全だと思います。くれぐれも無理はしないことが大事です。

脱力について

振られたので早速投稿してみます。が、もちろん正しいことを述べれているわけではなくただ単に私自身の考えということなので適当に読み流してください。

脱力とはもちろん皆さんがご存知のとおりただ単に全身の力を抜くということではありません。わかりにくいかもしれませんが、直立姿勢における状況に対して少しでもわかりやすく述べるとすると直立した姿勢を保ちつつ意識できるすべての筋肉をできる限り弛緩させると言えばいいでしょうか。

どういうことかといいますと、たとえば直立姿勢において首・肩・腰・胸・鳩尾・肘・手首・足首・膝・太もも・ふくらはぎなどの箇所を意識すればもう少し弛緩できるとするならば、その弛緩できた分は無駄な力だといえます。難しい表現でよく言われるのは骨格で立つとも言われています。

弛緩した状態で動く練習として様々な練習方法があると思いますが私が実践しているものを述べますと

①お風呂の中で浮力を動きのきっかけとして指先や腕を動かす。

②寝転んだ状態にて腕を上げ下げしてみる。

③片方の腕はできる限り脱力し、もう一方の腕で脱力した手の小指を持っていろいろと動かしてみる。

④脱力した腕の指先を他の人にいろいろ動かしてもらって、その動きに無理なく身体がついていくようにする。

⑤剣の素振りや体術のシャドーをする際に意識できる筋肉すべてにできる限り力が入らないよう改善していく。

⑥できる限り脱力した状態になるために、一日10分ほど正座して呼吸法を行う。

などがあります。

よく体幹の筋肉を使うとか肩甲骨から腕を動かすとか、屈筋ではなく伸筋を使うとかいろいろ言われますが技の流れの中でそれらを意識することは非常に難しいと思います。そして、逆に技の流れの中であまり使うべきではない筋肉を使っているかどうかのほうがわかりやすいと思います。ですので使うべき筋肉を意識するのではなく使ってはいけない筋肉を脱力することで結果的につかうべき筋肉が使われるようになるというのが、無駄な力を抜きなさいという言葉の本当に意味するところだと私は思っています。

そして無駄な力が抜けた際に得られるものを挙げてみますと

①腕力の強い相手にも、腕力による抵抗がされにくい(受けが仕手に対して抵抗するためには受けが力を伝える場所を見つけなければなりません。しかし無駄な力が抜けていて体幹近くにしか入っていなければ、腕・肘・肩・背中などに対して受けは力を伝える場所が見つけられないと同時に体幹までは遠すぎて伝えられないため結果として抵抗できなくなります。ゆえにもしも仕手として技を実施している際に、肘に投げている感触・肩に押し倒している感触などを感じているとしたらそれはそこに無駄な力が入っていると同時にもしも受けがしてよりも強い力で押し返してきた場合にはかからない技だという事を示しています。)

 

②静止した状態からでも技の起点を受けに悟られにくい。(相手と自分を一本の棒でつないだ場合と一本のたるんだ縄でつないだ状態を想像してみてください。一本の棒でつないだ場合は相手に自分の動きを悟られやすいと思いますが、一本の縄でつないだ場合に相手が自分の動きを悟ることは難しいと思います。同様に無駄な力が入っているとその力みを起点として受けは仕手の動きを察しやすいですが、無駄な力が抜けていると極論では受けは実際に崩した力が伝わった瞬間まで仕手の動きを感じることはできなくなります。止まっているものを動かないようにすることと、動き始めたものを止めることは同じ運動量だとしても難易度に天と地の差が生まれると思います。)

③受けが強くなる。(無駄な力が抜けていると仕手のちょっとした動きを体幹近くで感じれるようになります。そのため無駄な力が入っている仕手相手だと先回りさえもできます。)

以上のことから脱力の程度の巧拙がそのまま合気道の実力のひとつに直結すると思います。一番わかりやすいのはすわりの呼吸ですが、脱力程度が上の方にガチでかけることは上記のような理屈から非常に難しいです。