武道が子どもにどういう点で有益なのか、という質問をよくされます。
私は武道の「型」が子どもにとって非常に有意義だと思っています。合気道においては、挨拶から始まり、型稽古まで稽古全体を通して「型」にはまっている部分がたくさんあります。
昨今の教育方針では個性を重視して、お仕着せのような「型にはめる」ことには否定的に見る人が多数派かもしれません。しかし考えてみれば、子どもは何も教え込まれていない・躾けられていない状態においては、まったく無秩序に行動します。例えば、おやつがおいしいからご飯が食べられなくなるくらいおやつばかり食べてしまう、というように「食事の前に食べ過ぎてはいけない」というルール(すなわち型)が与えらえれていなければその時の気分で行動してしまいます。
もちろん個性はとても大切です。しかし、自分の個性が一体どういうものなのか、考える基準となるものが必要であり、それが定型的な「型」であると思います。だから、子どもに対して「型」を教える場面では、きっちりと厳しいくらいに「型にはめ」こむ方が子どもの判断基準を作り上げるにあたっても有意義ではないかと思うのです。子どもに与える方がぐにゃぐにゃなものでは、判断基準もぐにゃぐにゃになることは間違いありません。そう考えると、しっかりした「型」を子どもに身に着けてもらうためにも武道はそれなりに厳しい方がよいのではないか、と思っています。