STAP細胞論争を見て

昨日からテレビではSTAP細胞絡みのニュースが非常に賑やかに報道されているのですが、ニュースや特集を見るたびに強い違和感を感じるので、ちょっとブログに書いてみようかな、と思いました。全く合気道には関係ありません。ちょっと長いので興味のある人だけ。

テレビでは盛んに
・研究のやり方が杜撰だった
・データの提示がなされていない
・科学的にまったく全く納得できない
という「科学的な視点」や「研究者としての在り方」について議論がなされています。
それはそれで、いわゆる研究者の世界ではとても大切なことなのでしょうが、今回私がとても気になっていることは、当事者である小保方さんが4人もの弁護士に依頼をしていることなのです。

法律に詳しくない人には分かりにくいのでちょっと補足ですが、
弁護士を代理人として立てる目的は何らかの利益や権利を勝ち取るためです。
そして、現実的にほとんどの場合がそれは金銭的な利益を意味します。

今回の事件ですが、
・科学的な研究方法の正否
・研究成果の存否
・捏造の有無
についての真実を「科学的に」「学問的に」争うだけであればおそらく弁護士はほとんど役に立たないはずです。どんなに知財や化学に詳しい弁護士であっても、実際の研究者ではないので、そのあたりの証人や擁護者としては弁護士よりもまさに「研究者」の方が適しているわけです。でも、彼女はそういう人を会見の場には伴わず、あくまで代理人としての弁護団が付き添ってきただけです。

もちろん、パニックになって欧米よろしく「何もかも弁護士を通さないと話ができない」というスタイルを取ったのかもしれませんが、でも科学論争だけなら弁護士は役に立ちません。
弁護士が役に立つとすると、科学的な内容よりもむしろ調査の仕方とか手続き的な面についての問題があり、その不備を指摘する目的がある場合だと思います。そう考えると理化学研究所の調査の仕方について争うために弁護士を雇うこともあるわけです。
しかし、それでもさらに疑問が残ります。いや、むしろ強まります。では、一体弁護士を立ててまで彼女が望む利益は何なのか? です。

弁護士絡みなので法的に考えて弁護士を立てる場合は主に以下のいづれかの場合だと考えられます。
・理化研、ネイチャー、国などから損害賠償請求をされた場合
・自分の名誉を傷つけられたことに対する損害賠償請求のため
・自分の地位保全のため
この3つはどれも考えられうるのですが、今回の場合は上2つは非常に微妙な気がしています。まず真ん中の名誉棄損に基づく損害賠償請求。2009年に同じような捏造問題で名誉棄損による損害賠償請求裁判が東北大学でありました。その際は請求額が2400万円に対して判決は110万円。日本では名誉棄損の賠償額は非常に低額です。なので、今回でもとても4人の弁護士に成功報酬で支払えるような額ではありません。だからこれはないと思うのです。
次に一番上ですが、今回のケースで仮に悪意をもって論文を捏造したとしてもそれによって「具体的な経済的損害」が発生したとは多分言えないと思います。例えば、ネイチャーに掲載されたことを前提に補助金を受け取ったという事実があれば、国や研究所から返還と損害賠償を請求される可能性もありますが、そもそも研究途上の事柄について「実は嘘だったから研究費を返せ」なんていう理屈が通ったら、研究者の人生はみんなばくちになります。なぜなら、一時は定説であった理論が実は何十年か後に間違っていたということは大いにあることで、それを「間違っていた理論によっていろいろな損害がおこったから弁償しろ」と言われたらたまらないですし、また実験成果が出なかったら弁償しろとも言われかねません。そんなことをしたらそもそも研究というものができないですから、今回ケースが悪意であってもまず損害賠償問題は起こらないのではないかと思っています。ただし、研究費の不正流用は別ですが。
とすると、一番可能性が高いのが一番下の地位保全ですが、これは自分の研究所での立場や雇用を裁判的に勝ち取るという訴えです。彼女の場合年収は1000万円ほどと言われているので、期間雇用であっても経済的利益は大きいのですが、問題はその方法です。普通に考えれば、最初にいろいろと言われているように実験データや事実を提示して自分の正しいことまたは「そんなに悪くはないこと」を証明するのが一番正攻法であって、おそらく周囲やマスコミや研究関係者もそういう視点で考えているから、科学論争や研究是非論だけが取り上げられているのだと思っています。

にも関わらず、そういう釈明や弁明はほとんどなかった。とすると考えられる可能性は
・科学的事実や観点から自分の正当性を証明するのはほとんど不可能である
・もっと別の大きな利益が目的である
のどちらかかな、と思ってしまいます。

最初に違和感がある、と言ったのはこの点なのですが、もし科学的に自分の立場を維持することがほとんど不可能であるとすると、そもそも彼女と研究所やマスコミの論点はかみ合うはずもなく、言いかえれば彼女とすればどんなにめちゃくちゃに科学的に叩かれようがもともとそこで争っているわけではなく、法的な観点から自分の地位を保全しようとしているということになるわけですから、何となく一生懸命科学論を論じているのは筋違いのような気がするのです。
もう一つはかなりうがった見方なので、まあ違うとは思いますが、もし私が彼女の立場であってSTAP細胞自身の存在はまず確実で、もう少し時間をかければものにできるという状況にあるなら、捏造疑惑が研究所から湧いた時点で、外資系かどこかでふんだんに研究費を出して雇ってくれるところを探すんじゃないかと思います。そのためにも後始末というか、処理としてしっかりとした弁護士を雇ってきっちり片をつける(法的なあとくされのないようにしておく)というのもありかもと。もともと居心地の悪さがあったとしたらよけいそうかもしれません。でも、そんなんじゃあないことを願いたいですね。後味が悪い話になるし。

ところでSTAP細胞の研究は今どうなっているのでしょうか。ちゃんと継続されているのかな。せっかくの発見なので、真実なら外国に先を越されないようにして欲しい気がするのですが、大丈夫なんでしょうかねぇ。
とまあ、いろいろ考えながらニュースを見ていたわけですが、どうも当初の問題に対して大げさな弁護団まで組まれる一方で科学者らしからぬ対応をしているところに、違和感が拭えずいろいろ考えたりしてみたりしたわけです。
でも、書いたらすっきりしたので、ビールでも飲もうかな。

 

 

 

 

「STAP細胞論争を見て」への2件のフィードバック

  1. STAP細胞は、本当にあって、
    論文が残って居ると権利を独占出来ない何者かの
    横槍が入ったとか考えられそうですよね。

    1. そうなんですよ。テレビ見ていて、なんかそんなことまで考えてしまうのは変な本とかの読みすぎかも。

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