受け身の稽古 その2

受け身について、「受けを取る側が自分のタイミングで受けられることはまずありません。」というのは「怪我をする場合は受けが自分のタイミングで受けられない」ということか、という質問をいただいたので補足です。

そうだと思います。
例えば、呼吸投げでよく見られる光景ですが、仕手が投げたあとタイミングを調えてから受けを取る人がいます。
もう少し具体的にいうと、仕手が投げた動作をした瞬間に受けを取るのではなく、ワンテンポ遅れて受けを取る、というような受け身です。
こういう人は、仕手が投げるタイミングではなく自分のタイミングで受けを取っている訳です。そのため、仕手が相手を逃がさないように投げた場合に受身のタイミングを計れずに失敗するのです。
特に四方投げのように、受けが相手に完全に拘束された状態で投げられる場合に起こりやすいです。

実は、こういう受けをとる人には更に次の段階があって、何時でも自分のタイミングを取れるように、攻撃の手を弛める癖がつきます。
相手の体をしっかりつかんだり、力を込めて攻撃をすると体が固まってしまうため、柔軟にタイミングを取ることができなくなります。そこで、最初の攻撃の段階で全力を出さないようにしてあらかじめ受けを取る時のために余力を残しておくのです。

合気道の理では受けが「本気で相手を倒すための攻撃をしてくる」ことを前提に技が考えられています。受けが緩い攻撃をしてくるのであれば、自分のタイミングを柔術を使うまでもなく、少し痛みを我慢して攻撃を受けてから反撃すればすみます。別の例を挙げるなら、女性を襲う暴漢が、やさしく抱きしめるようなもので、それを想定するなら多分柔術は不要(というかそこまで高度な技がそもそも必要なくなる)と思います。
逆に言えば、相手の攻撃が破壊力に満ちていたり力がこもったものであるからこそ、高度な理や技術が必要になるのです。

ところが先にも述べたように、受けが苦手な人は無意識に攻撃をゆるめて、自分の受けに備えてしまいます。こういう人に対して理性的な仕手は無理をしてまで技をかけません。そんなことをすれば受けを怪我させてしまうことがわかるからです。ちなみに技をかけられる瞬間に全力で身体に力を入れる人もいますが、これも近いものがあります。
そのため、受けは自分がきちんと受けているような錯覚をしますが、実際には加減をしてもらっているだけで、受けることができてはいません。それだけでなく、手加減をされることでキチンとした技もかけてもらえないため技術もなかなか向上しません。

悪循環なのは、そういう受けをしているにも関わらず自分が受けができていると思うことで、そうなると何かの拍子に怪我をしたり、あるいはいつまでたっても上達しないという迷路に入り込んでしまいます。
そんなことのないよう、できるだけ早い段階からしっかりした受けを取れるように稽古することが怪我をしないためにも、合気道が上達するためにも必要だと信じています。

「受け身の稽古 その2」への4件のフィードバック

  1. フムフム、、、( ..)φメモメモ
    まさに、私がそんな状態の様な気がします。

    受けとして、仕手に攻撃を仕掛ける時はしっかりと
    やっているつもりですが、その後、仕手に技を
    掛けられると、身体に力が入ってしまいます。
    特に、関節を決められる際に、かばおうとして
    力が入るのかと、、、

    やはり、傍から見ていてもそんな感じですか?
    皆さんいかがでしょう?

  2. わたしも自分がそうであることは自覚してはいるのですが、
    どうしても「怖さ」があって(>_<) なんとか克服していきたいです…

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