ここでは3/22の午後に初心者向け剣術練習にて実施したことの意味合いについて記載しようと思います。
とその前に、三つのことを考えてみてください。
一つ目。強い剣とはどのような剣でしょうか?力強さも勿論ほしいところではありますが、やはり速いことではないかと思います。そして単純な剣速が早いことも大事ですが、目標地点に最速で到達できること即ち最短距離を剣が移動することも大事だと思います。その他に起こりを見せないことなどもありますが今回はこれは置いておきます。
二つ目。裸拳を頭上に掲げた状態からもっとも早く振り下ろすにはどのような筋力が必要でしょうか?振り下ろすという動作が難しければ腕をブランブランと振り子のように前後に動かしてみるのでもかまいません。これらの動作を行う際に拳を強く握りこんだり、上腕に力を入れたり肩に力をいれるとどうなるでしょうか?きっと動きは遅くなると思います。剣をもって同じ動作をしても使う筋肉はほとんど変わりませんので前述のような腕力は剣に負の影響を及ぼす恐れがあるということがお分かりいただけると思います。
三つ目。例えば剣を上段に構えた状態から最速で振り下ろすにはどのように振り下ろすのが一番早いか?人によって異なると思いますが現時点で私が最も早く剣を振り下ろすには、左手で剣の柄を握り右手は剣を前方下方方向に向けてポンっと押すという動作になります。もっと早い振り下ろし方があったら教えてください。ここで私が言いたいのは両手で正しく剣を持って振り下ろしの動作を行った場合に、自分の最速よりも遅い振りになるとしたらその遅くなる原因を一つ一つ取り除いたほうが良いということであり、取り除けるだろうということです。簡単にいうと、剣を振る際に肩・肘・胸など色んな場所が邪魔するよね~ってなことです。
他にもこういったことは考え出したらきりが無いくらいあります。これらの前置きで伝えたかったのは、新しい動き未知の動きを練習する前に少し身近な動きで新しい動きに対して考えてみると何が良くて何が悪いかの判断指標が自分の中にも出来る筈ということでした。前置きはこれぐらいにして本題に入ります。今回の練習で初心者の皆さんにお伝えしたかったことは主に2点
①剣の動きを邪魔しない。
②左手が中心から外れない。
があります。この二点を強く認識していただくような練習を心がけました。①はその言葉通り、剣は初速を与えてやれば剣の重みだけで後はある程度動きます。この剣の重みによる動きを邪魔しないということです。そして②は前述しました剣を最短距離で動かすことのほか今後に役立つ様々な要素を含んでいます。これらを身に着けていただくメニューを組みました。
まずは剣の持ち方。初めての方だけで無く、剣を握り始めてから数年という方でも案外できていません。できていない方は基本的に手の絞り込みが甘いためこの状態で剣を降ると、剣を止める度に手首が固まる為、剣から柔らかさも強さも失われます。勿論、私が教えた持ち方を初心者の方が実施すると強制的に脇まで締める状態になる為剣の振り上げふりさげすらままならないと思います。しかし剣の動きを邪魔するような腕力を使わずに剣を行うには必須ですので気をつけてください。
次に剣の重さを実感する稽古を実施。まずは剣を正中線上かつ頭上に構えた状態から左手だけで維持し、右手でぽんっと押して落とすという作業。そして落とした剣は受けに臍の位置で構えてもらった剣で受けます。次に同じことを普通に剣を掴んだ状態で実施していただきました。ここで体感していただきたかったのは、力を使わなくても剣の威力は出せるということと、下手な力は剣の動きを邪魔するということでした。
引き続いて、剣を操る際の手のうちの締め方について説明しました。これについて記載する前に少し剣に関しての大原則について記します。剣の威力は、剣の速度と切る対象物に当たっている際の手の内・脇・身体の締めに依ると思います。そして締め方を基本から学んでない方の多くに見られるのは締めると同時に剣の速度を減速させてしまうため剣の威力が格段に落ちるということです。こういった剣を殺す締めにならない為の締め方、手首の力は使わず掌や手の内だけを締める方法を練習しました。そしてその後、剣の重さを実感する方法に手の内だけを締める方法を組み合わせた練習を実施。この練習の際に注意して欲しかったのは、剣が受けの剣に当たる前に手の内を絞るのでは無く受けの剣に少し重みがのった瞬間に絞らなければならないということでした。このタイミングを誤ると剣の重さをいかした切りが出来ないので非常に重要です。
次に切り割の指導にうつりました。他の動作でも同様ですが、初心者は軽いはずの剣の重さや右手の動きに引きずられて左手が中心線上から外れることが多々あります。そして左手が中心線上から外れると剣は最短距離ではない余分な軌道を動く為、相手に届くまでの時間が余分にかかることは勿論ですがさらに悪いことは軌道に一貫性が無い為、剣尖の力が弱まります。
というわけで左手を中心線上からずらさないことを強く意識していただく為にまずは両手共に剣の柄を掴んだ状態で剣をふっていただきました。
無構の状態から両手は中心線上を上下するのみ。両手を上げた後、剣尖が中心線上にくるタイミングで両手を降ろす。たったこれだけの動作でも、予想通りというか中心線上から手が外れる方が多数ありました。手がある程度外れなくなったのを確認し、今度は剣を普通に掴んだ状態から切り割を。右手が中心線上から外れている分、右手の悪影響をもろに受けている方が多数。
最終的には剣の動きに、自分の筋力などをプラスしてより速く強く動かせることを目指していただけば結構ですが、初めはとにかく剣が自由に動くのを邪魔しないように身体の節々を動かせるようになることを目指してください。
切り割で意識してもらったことを袈裟切りでも意識していただき以上で剣の練習は終了となりました。